
7月17日のzoomでハナキンで「授業で使える人狼ゲーム」というテーマでお話させていただいたのですが、思いの外、多くの方に興味をもっていただけたようなので改めて記事にまとめてみました。
人狼とは
ロシア発祥で、アメリカから広まったパーティーゲーム。年齢を問わず世界的に知名度のあるゲームです。各国で「人狼(WerewolfまたはMafia)」又は「人狼ゲーム」と呼ばれています。
善良な市民の村に人狼が紛れこみ、毎晩村人を食べていってしまいます。もちろん市民は誰が人狼かわかりません。市民は議論し合いながら協力して人狼を探し出す/人狼は嘘をついて市民の振りをして生き延びるゲームです。
市民も人狼も自分が市民だと信じてもらうためにはとにかくたくさん話して説得力のある意見をいうことです。このあたりがなんとも日本語の授業に向いていると思いませんか?
私の経験では国籍を問わず、ほぼ8割の学生が人狼ゲームをプレーした経験がありました。そのため、授業で扱う場合、ルール説明も不要な場合が多く導入が楽!です。
なぜ授業で人狼を?
発端は毎回授業で活発なディスカッションなんてできやしないという悩みでした。例えば上級のクラスで、読解の教材を読んだ後、このテーマでディスカッションしようと言っても、学生にはそのテーマの知識がないことが多いですし、教師が付け焼き刃で知識を身につけてそれを教えてもあまり状況は変わりません。知識もなければ興味もないテーマでディスカッションしてもつまらないですよね。
■参考日本語OPI研究会 OPIを授業に生かすNo.2 http://www.opi.jp/shiryo/jugyoni/j_02.html
でも、上級クラスの学生のレベルをさらに引き上げようと思うと、OPI「話す」の超級にあるような活動ができなければ伸びません。どうすればいいか…
そんな時、人狼って、裏付けのある意見言わなきゃいけないし、仮説もたてなきゃいけない、そうだ!ディスカッションの代わりになるんじゃないかと思ったのでした。
なお、超級向けっぽい書き方をしていますが、私は「みんなの日本語初級2」が終わった直後のクラスでもやったことがあります。余裕でいけます。
人狼のルールとプレー動画
この動画が面白さが伝わりやすいかなと思います。ルール解説は4:00〜から。
授業で人狼をやってみたら
確か上に書いたことを思いながらとりあえずいつかやろうと思って、人狼ゲームのカード版を学校に置いておいたら他の先生が授業で使って「すごくよかった!今まで見たことないほど真面目にやってた!」聞いたような気がします。
その後自分でもやってみたら「みんなよう喋る!終わった後の感想戦まで盛り上がる!」
プレー中の様子を見ていると、市民の意見がバラバラにならないよう今までみたことのないリーダーシップをとる学生がいたり、クラスの中ではあまり目立たない学生なのに顔色一つ変えず嘘をつく恐ろしいほどの演技力を発揮する学生がいたり、と学生の性格をより深く知れる機会になったり、またいつもは授業が終わったらバラバラにさーっと帰っていく学生たちが、「あなたのあの時の発言はよくなかった」「あなたのあの発言はうまかった」などと終わった後の感想戦でも盛り上がったりしていました。
しかし(ノーマルの)人狼には
1 1ゲームに時間がかかる(1時間以上も)
2 初日に処刑された人は50分以上ボーッとしなければならない
という難点があり,特に2は50分黙ってるだけになってしまうので致命的です。
その難点を解決するのが、市民側か人狼側が勝つまで何晩も続く(ノーマルの)人狼を、一晩のみにしたワンナイト人狼です。
ワンナイト人狼のメリット
- 少人数でも遊べる(最低3人必要) ※ノーマル人狼は7人は必要
- ゲームマスター(司会)不要
- 脱落者なし
- 1ゲーム5分~最大15分
ワンナイト人狼のプレー動画
※ルール動画はこちらが良いかと思います。2分。http://ur0.work/R47W
ツール
市販のカードでやってもいいのですが、以下のツールを使うとより楽にできると思います。授業中、もしLINEやブラウザが使えない環境にあったら、手作りでカードを作ってしまえばOKです。すぐに作れます。
■LINE版ワンナイト人狼

ワンナイト人狼のゲームマスター(司会)をbotが務めてくれ、役職の配分、役職への指示をbotが出してくれます。利用するためには特別なアプリ等は不要で、LINEさえインストールされていれば使えます。使い方はLINEで@nto6347bをフォローするだけ!
■ブラウザワンナイト人狼
スマートフォンやPCのブラウザだけで「ワンナイト人狼」が遊べるページです。昨日は大体LINEと同じですね。
少々不具合が多い(時間が停止したり、投票機能が動作しなかったり)のですが、特に連絡先等の交換も不要でできるのでこちらの方がいいのかなとは思います。
人狼の教育的効果
■伸ばせる能力
- 自己主張力、またその積極性を伸ばせる
- 人の発言や表情の変化を観察し、相手の気持ちを推察する能力が伸ばせる
- 人の話を注意深く聞けるようになる
- 人と協力することの大切さを学べる
- 人と仲良くなれる
特に5に関しては、クラスが始まっての初日、アイスブレイクの活動として人狼をすると、クラスメートの距離も縮まり、雰囲気も良くなりその後のクラス運営が楽になるのではと思います。
■ダブルバインド
平田オリザ氏著「わかりあえないことから」において、(日本)企業の欲しい人材像とは
「異なる文化や価値観を持った人にもきちんと自分の主張を伝え、説得しそして妥協点を見出せる」(異文化理解能力と自己主張能力)
である一方で、
「上司の意図を察して機敏に行動する」(いわゆる空気を読む力)
も求められています。
このように相反する価値観が求められる状況をダブルバインドと言うそうなのですが、人狼はまさにこのダブルバインドに対応する能力を養成できるのではないかと思います。
なんか面白そう…と思ったら
■まずは上の動画をみてください。
■その次に、実際に自分でも人狼をプレーしてみてください。おすすめは「人狼ジャッジメント」というアプリです。これはノーマルの人狼ですが、一人でも試すことができますし人狼がどんなゲームかよくわかると思います。これで慣れたら対面又はオンラインの人狼へ。(対面とアプリだと微妙に文化が違ったりもしますが特に問題はありません)↓からダウンロードできます。
■授業で自作のカードやツールを使ってワンナイト人狼を試してみてください。(上でも書いた通り、大体の学生は知っています。)
最後に
村上吉文さんが毎週金曜夜に開催されているzoomでハナキン、7月31日に「オンライン人狼をやってみよう(見てみよう)」の部屋を開かせていただこうと思います。この記事をご覧いただき、人狼に興味をもたれた方は是非ご参加ください。