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解説

育成就労で日本語教師はどこで何を教えるか 入国後講習のA1・100時間と3年間のA2講習

公開 2026年10月2日 更新 2026年10月2日 分類 特定技能・育成就労/教員資格

2027年4月に始まる育成就労では、就労開始前のA1相当講習100時間と、3年間のA2目標講習100時間の機会提供が義務になります。担い手は認定日本語教育機関の「就労」課程が原則ですが、当分の間は登録日本語教員による授業でも代えられます。

技能実習に代わる育成就労制度が2027年4月1日に始まる。NHKは10月1日、新制度がまとまった日本語講習を義務づける一方で、講習を提供すると答えた日本語学校は3割に満たないと報じた。では日本語教師は、どこで、どのぐらい、何を教えることになるのか。入管庁・文科省・厚労省の資料と報道から、確定している制度と現時点の状況を整理する。

日本語は3つの段階で求められる

育成就労では、入国の時点では日本語の要件はない。そのかわり、次の3つの段階で日本語能力が求められる。

就労開始前は、A1相当以上の試験に合格するか、認定日本語教育機関の「就労」課程でA1相当の講習を100時間以上受ける。就労中の3年間は、受入れ企業(育成就労実施者)が、A2目標の講習を100時間以上受けられる機会を用意しなければならない。特定技能1号に移るときは、A2相当以上の試験(日本語能力試験N4等)の合格が要件になる。技能実習2号を良好に修了すれば日本語試験が免除された今の仕組みとは、ここが違う。

入国前(本国)入国前講習A1講習の一部を本国で行うことも可入国後講習就労開始前・監理支援機関A1相当講習 100時間以上(A1試験合格者は不要)講習全体320/220時間以上就労中の3年間受入れ企業が機会を提供A2目標講習 100時間以上同時双方向のオンライン受講も可特定技能1号へA2相当以上の試験に合格(N4等)この2つの講習の担い手原則:認定日本語教育機関の「就労」課程登録日本語教員・20人以下・オンライン3/4まで・企業等の場所でも可施行後当分の間:登録日本語教員による授業生徒20人以下などの要件で「就労」課程の受講とみなす
育成就労で日本語講習が求められる場面と担い手(2027年4月1日施行の制度。数字は入管庁・文科省の資料による)

どこで:入国後講習と、受入れ企業の3年間

入国後講習。技能実習で監理団体の「研修センター」などで行われてきた講習は、育成就労では入国後講習として引き継がれる。監理型(監理支援機関を通す受入れ)では、全科目を就労前に行う。科目は、日本語、日本での生活一般の知識、法令違反に気づいたときの対応など法的保護に必要な情報、技能の修得に役立つ知識の4つ。講習全体の時間は、A1相当の試験に合格していない人(Aパターン)が320時間以上、合格している人(Bパターン)が220時間以上で、過去6か月以内に入国前講習を受けていればそれぞれ160時間以上・110時間以上に短くなる。このうち日本語は、A1未合格者ならA1相当講習100時間以上を受ける。

A1試験に合格済みの人でも、入国後講習には日本語の科目がある。ただしこの場合は、認定日本語教育機関などによる講習でなくてもよいとされている。

就労中の3年間。A2目標講習100時間以上の機会を用意するのは受入れ企業の義務。オンライン受講もできるが、双方向で同時にやり取りできることなどの要件がある。

担い手。どちらの講習も、原則は認定日本語教育機関の「就労」課程が担う。「就労」課程には、留学課程にない運用が認められている。同時双方向の遠隔授業を総授業時数の3/4まで実施でき、企業や地方公共団体と連携すれば校舎以外の場所で恒常的に授業ができる。研修センターや工場の会議室で授業をする形が制度上想定されているということだ。そのうえで、施行後当分の間(NHKは5年間をめどと報じている)は、登録日本語教員による授業で「同時に授業を受ける生徒が20人以下」などの要件を満たせば、「就労」課程の講習を受けたものとみなされる。

監理支援機関が自ら担う動き。NHKによると、講習を受けられるようにする責任は受入れ企業にあり、企業や監理支援機関が手配することが想定されている。そのなかで、監理団体が自ら日本語講習を行えるよう準備する動きが出ている。岡山県倉敷市の監理団体では職員が登録日本語教員の養成コースに通っており、日本語学校に頼むより受入れ企業の日程に合わせやすく、比較的低いコストで講習を提供することを狙っているという。NHKが登録日本語教員の養成講座を設ける27の日本語学校や運営法人に取材したところ、12の法人などが監理団体の職員の受講や問い合わせが増えたと答えた。技能実習で監理団体の研修施設が担ってきた入国後講習の日本語を、登録日本語教員を内部に置いて自前で行う形になる。

どのぐらい:規模の手がかり

厚労省資料によると、育成就労の受入れ見込数は令和11年(2029年)3月末までで42万6,200人(特定技能は80万5,700人、計123万1,900人)。技能実習では設定がなかった数字で、2027年4月の制度開始から数える。参考までに、令和7年末の技能実習の在留者は45万6,618人。

一方の供給側は、令和8年度1回目の認定日本語教育機関の申請230機関のうち、「就労」課程は4機関にとどまる。登録日本語教員は20,075名(令和8年8月21日時点)。

NHKによると、入管庁などが2026年6月に全国のおよそ900の日本語教育機関を対象に調べたところ、育成就労向けの講習を「提供可能」または「提供する方向で検討」と答えたのは、3割に満たない240あまりだった。入管庁は同じ令和8年6月時点の「講習提供状況一覧」を、認定日本語教育機関(「就労」課程のみ・全体)と告示日本語教育機関の3つに分けて公表している。入管庁は9月に日本語学校向けの説明会を開き、講習の実施を検討するよう協力を呼びかけた。入管の担当者は背景として、留学生中心で就労向け講習のノウハウがないこと、教員が必要なこと、制度開始前で決めかねていることを挙げている。日本語学校の担当者からは、留学に比べて1人あたりの授業期間が短く、得られる授業料も低いという声も紹介された。

講師が何人必要になるか、報酬の水準は、公表された資料がないため書いていない。受入れ見込数は上限の性格をもつ数字で、A1試験の合格者はA1講習が不要になるため、「見込数×100時間」で需要を出すことはしていない。

なにを:A1から始めてA2の試験に届かせる

教える中身は、「日本語教育の参照枠」のA1相当(就労前)から、A2目標(就労中)までになる。3年後に特定技能1号へ移るにはA2相当以上の試験合格が要件になるので、就労中の講習は、試験の合格まで見すえた設計が求められる。認定日本語教育機関の「就労」課程の授業時数の基準は、A1課程が100時間以上、A2課程が200時間以上、B1課程が350時間以上。育成就労で受入れ企業に義務づけられるA2目標講習の100時間は、A2課程の基準時数の半分にあたる。

以下は当社の見立て。「就労」課程の申請が4機関、講習の提供意向が240あまりにとどまる以上、施行当初の講習は、登録日本語教員による授業(みなし)が大きな比重を占める可能性が高い。担い手は日本語学校だけでなく、登録日本語教員を内部に抱える監理支援機関にも広がる。日本語教師にとっては、日本語学校での勤務に加えて、監理支援機関や受入れ企業と直接かかわる場面が増えると見ている。

実務への影響

  • 入国後講習や3年間の講習を「就労」課程の受講とみなしてもらうには、教える人が登録日本語教員であることが前提になる。未登録の教師は、関われる範囲が狭くなる。
  • 学校として関わる道は、認定日本語教育機関の「就労」課程を置くか、登録日本語教員を監理支援機関・受入れ企業の講習に出すか。講習の手配は受入れ企業や監理支援機関が担うと想定されており、監理支援機関の中には自前で講習を行う準備を進めているところもある。
  • A1試験合格者の入国後講習の日本語科目は、認定日本語教育機関等以外でも実施できる。対象者のA1合否によって、求められる講習の形が変わる。

経過措置の期間(5年間めど)と、日本語教育機関への調査結果(およそ900のうち240あまり)は、NHKの報道による。登録日本語教員による授業のみなし要件のうち、「生徒20人以下」以外の要件は資料に「など」とあり、内容は確認できていない。

一次資料

  1. 育成就労制度Q&A(出入国在留管理庁)
    www.moj.go.jp/isa/applications/faq/ikusei_qa_00002.html
  2. 育成就労制度の関係省令等について(出入国在留管理庁)
    www.moj.go.jp/isa/content/001451331.pdf
  3. 日本語教育機関の講習提供状況一覧表(令和8年6月時点)について(出入国在留管理庁)
    www.moj.go.jp/isa/03_00195.html
  4. 就労のための課程・生活のための課程を置く認定日本語教育機関の認定等について(文部科学省)
    www.mext.go.jp/content/20250117-mxt_nihongo01-000034783_02.pdf
  5. 特定技能制度及び育成就労制度の分野別運用方針について(厚生労働省)
    www.mhlw.go.jp/content/11801000/001660527.pdf
  6. 令和7年末現在における在留外国人数について(出入国在留管理庁)
    www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00062.html
  7. 認定日本語教育機関の申請機関数(文部科学省)
    www.mext.go.jp/a_menu/nihongo_kyoiku/1420729_00019.htm
  8. 登録日本語教員の登録等に関すること(文部科学省)
    www.mext.go.jp/a_menu/nihongo_kyoiku/mext_02668.html

この解説は2026年10月2日時点の公表資料にもとづいています。制度は変わることがあるため、判断の際は必ず上記の一次資料をご確認ください。内容の正確性や当社の見解を保証するものではありません。

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