留学生のアルバイト(資格外活動)のルールが見直されようとしています。進めているのは入管庁ではなく政府全体です。内閣官房に置かれた関係閣僚会議(議長は内閣官房長官、ほかに20人以上の閣僚が参加)が令和8年1月23日に決めた「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」という政策パッケージがあり、そのなかの「在留資格『留学』に係る適正化」という項目で扱われています。入管庁はそれを実行する側です。
きっかけは、週28時間を超えて働く留学生がいることです。総合的対応策の「現状及び課題」にこう書かれています。「近年、在留資格『留学』の在留外国人数が増加しており、一層適正な在留管理を図ることが重要であるところ、週28時間を超えるアルバイトを行うなどの資格外活動違反も生じていることから、留学生が在留資格『留学』の趣旨に沿った形で在留することを確保する必要がある。」
令和8年4月から始まっています。3か月に1度、在籍する留学生ひとりずつに次の4つを確認することになりました。聞き方は決まっておらず「任意の方法」でよいとされています。
| ア | 資格外活動許可を持っているか |
| イ | どこで働いているか。掛け持ちしているなら全部 |
| ウ | どんな仕事か |
| エ | 1日ごとの就労時間 |
| 違反を見つけたら | 指導して直ちに改善させる。改善されたことを改めて確認する |
| 記録 | 確認結果と指導の記録を保存する(参考様式あり) |
| 入管に報告する場合 | 「雇用主に週28時間超を強いられている」と学生から言われたとき。指導しても改善しない学生がいるとき。記録などを最寄りの出入国在留管理官署へ |
根拠は、入管法の関係省令、「出席管理及び在留継続支援体制に係る認定日本語教育機関の運営に関するガイドライン」、「日本語教育機関の告示基準」です。入管庁のQ&A(令和8年5月19日現在)では、生徒からの自己申告によって把握することは差し支えないとされる一方、遵守状況を適正に管理する体制が整備されていないと判断される場合は上陸基準省令第2号の2に抵触する可能性があるとされています。自民党外国人政策本部の第2次提言(令和8年6月9日)には、入管職員が実地に赴いて資格外活動許可違反の有無を確認できるよう体制強化を求める記載があります。
同じ令和8年4月から、入管庁は外国人雇用状況届出(アルバイト先の事業主が提出するもの)を使った実態把握を始めています。総合的対応策では「速やかに実施する施策」に置かれていたもので、第3回会議で運用開始が報告されました。
| 決定時(R8.1) | 外国人雇用状況届出を活用し、複数の稼働先で資格外活動を行っている留学生を特定するなどして、教育機関と連携した実態把握や指導を行う |
| 報告時(R8.7) | 日本語教育機関に在籍する複数のアルバイト先で働く留学生を特定するなどして、同機関と連携した実態把握や指導を行う運用をR8年4月に開始 |
| 令和8年6月14日から | 外国人雇用管理指針を改正し、外国人雇用状況届出に際して在留カード等読取アプリの使用を規定 |
| 整備済み | 未届・虚偽届への対応手順を都道府県労働局・ハローワークに通知し、警察当局・入管当局への相談・情報提供までの流れを整備 |
| 令和8年度中に実施予定 | 在留カード等読取アプリで失効情報照会の結果を自動表示させる改修 |
総合的対応策には、マイナンバーによる情報連携で得る留学生の所得情報を、資格外活動違反者の調査に使う方向で検討すると明記されています。原文はこうです。
| 速やかに実施する施策 | 令和9年から開始予定の公共サービスメッシュを活用した、マイナンバーによる情報連携に合わせ、留学生の所得情報を活用することで、より的確かつ厳格な審査を実施する方向で、資格外活動違反者の調査に係る運用の詳細を検討する |
書かれているのは「所得情報を調査に活用する方向で運用の詳細を検討する」までです。週28時間を超えた時間数そのものが自動的に把握される、という記載はありません。連携は令和9年3月以降の開始予定で、現時点(令和8年8月)では稼働していません。
いちばん影響が大きいのはここですが、何がどう変わるかは、まだどこにも書かれていません。いまの仕組みと、検討するとされている範囲を並べます。
| いまの仕組み | 包括許可。申請書1枚で審査らしい審査はなく、新規入国なら空港で在留カードと一緒に受け取れる(平成24年から)。事実上、希望する留学生全員に一律で出て、週28時間以内(教育機関の長期休業期間は1日8時間以内)ならどこで働いてもよい。見直しの対象になりうるのは、この「全員に一律で出る」しくみそのもの |
| 検討するとされていること | 「資格外活動の実態等を踏まえつつ、資格外活動許可及びその管理の在り方(日本語教育機関による在籍者の資格外活動の適切な把握及び指導の在り方を含む。)について検討する」(施策33・今後の課題) |
| 何がどう変わるか | 記載なし。いまの包括許可という枠組みを維持するのかどうかも書かれていない |
| いつ結論が出るか | 時期の記載なし |
| 令和8年4月に行われたこと | 日本語教育機関に求められる管理体制の在り方を各機関に示すところまで。許可制度そのものは変わっていない |
第3回会議の進捗管理表でも、この項目は「★=着手すべき課題」のまま残っています。その実施状況欄に計上されているのは、機関に管理体制の在り方を示したこと——第1節の3か月確認——です。学校の管理は、この許可制度の検討課題の一部として扱われています。
| R7年11月4日 第1回 | 関係閣僚会議が発足。総理指示に「外国人留学生・外国人学校に対する支援をはじめとする各種制度・運用の見直し・適正化の推進」。資格外活動についての記載は確認できず |
| R8年1月23日 第2回 | 総合的対応策を決定。「在留資格『留学』に係る適正化」に施策番号28〜33を置き、資格外活動違反の調査、複数稼働先の特定、所得情報の活用、許可の在り方の検討を並べた |
| R8年4月 | 学校の3か月ごとの確認と、入管庁による実態把握が運用開始(いまここ) |
| R8年7月24日 第3回 | 進捗報告。新しい決定はなく、上の2件の運用開始が計上された。許可の在り方は課題のまま |
| 現状及び課題 | 近年、在留資格「留学」の在留外国人数が増加しており、一層適正な在留管理を図ることが重要であるところ、週28時間を超えるアルバイトを行うなどの資格外活動違反も生じていることから、留学生が在留資格「留学」の趣旨に沿った形で在留することを確保する必要がある。 |
| 施策28(実施中) 法務省・文科省 | 文部科学省と出入国在留管理庁が連携した在籍管理の徹底や日本語教育機関認定制度に基づく日本語教育機関の適正化を図っている。また、資格外活動許可を受けた留学生について、外国人雇用状況届出を活用した資格外活動違反の調査を行っている。 |
| 施策31(速やかに実施) 法務省 | 外国人雇用状況届出を活用し、複数の稼働先で資格外活動を行っている留学生を特定するなどして、教育機関と連携した実態把握や指導を行う。 |
| 施策32(速やかに実施) 法務省 | 令和9年から開始予定の公共サービスメッシュを活用した、マイナンバーによる情報連携に合わせ、留学生の所得情報を活用することで、より的確かつ厳格な審査を実施する方向で、資格外活動違反者の調査に係る運用の詳細を検討する。 |
| 施策33(今後の課題) 法務省 | 資格外活動の実態等を踏まえつつ、資格外活動許可及びその管理の在り方(日本語教育機関による在籍者の資格外活動の適切な把握及び指導の在り方を含む。)について検討する。 |
同じ項目には、日本語試験の合格証明書の偽変造防止(施策29)と、検挙された留学生が通う日本語教育機関の情報を警察庁から法務省・外務省へ提供する仕組み(施策30)も置かれています。資格外活動そのものの施策ではないため、ここでは扱っていません。
| 記号 | 意味(資料2の凡例) |
|---|---|
| ○ | 実施中又は速やかに実施する施策 |
| ★ | 着手すべき課題 |
| 管理番号12(○) | 【施策】外国人雇用状況届出を活用し、教育機関と連携した実態把握・指導を行う 【実施状況】日本語教育機関に在籍する複数のアルバイト先で働く留学生を特定するなどして、同機関と連携した実態把握や指導を行う運用をR8年4月に開始 |
| 管理番号13(★) | 【課題】留学生の資格外活動の実態等を踏まえつつ、資格外活動許可及びその管理の在り方について検討 【実施状況】R8年4月、日本語教育機関に求められる管理体制の在り方(留学生の資格外活動の遵守状況の適正な把握等)を各機関に具体的に示した |
進捗管理表の管理番号と、総合的対応策の施策番号は別の体系です。資料上に両者の対応関係は明示されていません。
| 会議体 | 性格 | 状況 |
|---|---|---|
| 外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議 | 政府の意思決定機関。議長=内閣官房長官、副議長=共生社会推進担当大臣・法務大臣、構成員は他20閣僚 | 第1回 R7.11.4/第2回 R8.1.23(総合的対応策を決定)/第3回 R8.7.24 |
| 外国人との秩序ある共生社会の実現のための有識者会議 | 閣僚会議の下の諮問機関 | 意見書提出 R8.1.14 |
| 自民党 外国人政策本部 | 与党提言 | 第1次 R8.1.20/第2次 R8.6.9 |
このページについて。政府資料と与党提言のうち、留学生の資格外活動に関わる部分だけを整理したものです。原文の言い回しを平易にしている箇所がありますが、意味は変えていません。判断の材料にされる場合は、下の出典から原資料をご確認ください。