(写真は2013年以前のものです。)

前回まで

ネパール現地での日本語教師研修会についてのお話をしていました。今回はその研修会で話題に上がった漢字の教え方から話を始めます。

漢字の教え方

「漢字をどうやって教えたらいいか。また、自分自身もどうやって覚えて学生に伝えればいいか」というネパール人日本語教師の質問に対して、集まった先生たちで考えようということになりました。

一つ一つの漢字には意味があるので、その意味を漢字の形やネパール人ならだれでも理解できる身近な物事とリンクさせて話を作ってみようという活動をしました。

例えばよく言われる「休む」という漢字は、人が木の下で…というあれです。

結果は…いやぁ、なかなか非漢字圏の方が日本語教師をするのはむずかしいということがわかりました。現地の日本語学校がボランティアでもいいから、資格がなくてもいいから、日本人に手伝ってほしいと言ってくる理由がわかりました。まず、漢字を知っていても、書ける漢字が少なかったですし、ひらがなやカタカナも書き順を別にしても出来上がったその文字が読めないときがありました。

もちろん、中にはちゃんと書けていて、日本語で話してくださる方もいらっしゃいましたが、発表のほとんどをネパール語で話し、活動の内容自体を理解しているかもあやしい発表もありました。うーん、この方々が現地で教鞭をとっているのか。と考えると、ひらがなもカタカナも書けない学生が来日してくるのも合点がいきます。残念ですが。当然のことながら、海外の日本語教師をされている方々の質の向上も重要な課題です。そのことを自覚していて、研修会に参加されている先生方を尊敬しています。

私もその研修を受けたので2つ発表しました。

1.「外」

T「冬の昼の寒い日、どうしますか。家にいますか。」

S「いいえ、そとに行きます」

T「どうしてですか」

S「家の中は寒いです。そとのほうがあたたかいですから」

T「あたたかい(→ネパール語で「タト」)、カタカナで“タト”を書きます。冬の昼はあたたかい(タト)ですから、外へ行きます」

ネパールも寒い日があります。日当たりを考えて設計されていなかったり、主に石を使って作られたりした家が多い地域だったのでお昼はよく毛布を肩にかけて外で日向ぼっこしている人を見かけました。

2.「出」

シヴァ神が持っている棒(名前がわからないこんなの→Ψ)がダブル!神様の話にシヴァがたくさん出ます。というような発表をしました。

書き順がとか、意味がとか縛らないで、各国で漢字をこのようにちょっとでも紹介できたら、来日していきなり漢字に触れてアレルギーを起こす学生も減るのではないかと期待したくなります。

天才ネパール人!発見!

ネパール人は漢字が苦手。漢字の仕組みを伝えても初級ではわかってくれないとあきらめていませんか。確かに、結構時間をかけて、日本の生活になれ、語彙が増えてきたころで漢字や意味の話をして、わかってくれる学生がちらほら出てくるくらいかもしれません。しかし、私がネパールにいたころに一人だけ、「あ!この子、すごい!」と思った学生に出会ったことがあります。

その学生はある日、ふら~っと、教室に現れ、ひらがなとカタカナを教えると、二週間もしないうちにすべて覚えてしまいました。漢字を教えると、その学生よりも長く勉強していたほかの学生たちをあっという間に抜かしてしまいました。彼専用に違う漢字テストを用意するほど優秀でした。JLPTN3も夢じゃないと彼にはすごく期待しましたし、大事に育てたいと思っていました。思っていたのに、1か月後、彼は家庭の事情でインドへ行くことになってしまいました。せっかくの才能、もったいなかったのですが、英語もできそうだったので、どこへ行っても活躍してくれると信じて、送り出しました。

次で最終回となります。特にオチはありませんが…