「やさしい日本語はやさしいか」という一橋大学言語社会研究科特別研究員の井上徹氏の論文があります。
なお、ジャーナリスト出井康博氏の記事「8割以上の日本語学校は偽装留学生頼み(PRESIDENT Online)」の中で、井上氏の論文「日本語教育の危機とその構造 : 「1990年体制」の枠組みの中で」が8割以上の日本語学校が偽装留学生頼みだとする論拠として引用されていました。
以下井上氏の論文、「やさしい日本語はやさしいか」の内容を紹介します。
やさしい日本語について
やさしい日本語はその性質上、3つに分類できる
・平時のやさしい日本語(話し言葉)
地域日本語教室における日本語教育を対象とし、外国人参加者、日本人参加者双方に対して「やさしい日本語」を普及することを目的とした日本語(地域日本語教室編)
・平時のやさしい日本語(書き言葉)
「生活者としての外国人」が読んで理解できるように NHK ニュースや公文書をやさしくした日本語
・災害時のやさしい日本語(書き言葉、話し言葉)
災害発生から 72 時間以内の情報伝達を目的とした、外国人被災者が災害情報を受け取り、適切な行動がとれるための日本語
やさしい日本語の有効性
・災害時のやさしい日本語
検証が行われ、その有効性が実証されている
・平時のやさしい日本語
検証が行われておらず、その有効性が実証されていない
移民に対する言語学習保障
・予算の違い
EJ諸国・・・予算を投じ、移民への言語教育をサポートしている
日本・・・移民に対する言語教育に割く予算は非常に少ない
移民
国際移民の正式な法的定義はありませんが、多くの専門家は、移住の理由や法的地位に関係なく、定住国を変更した人々を国際移民とみなすことに同意しています。3カ月から12カ月間の移動を短期的または一時的移住、1年以上にわたる居住国の変更を長期的または恒久移住と呼んで区別するのが一般的です。
―国連経済社会局
難民と移民の定義|国連広報センター
・学習レベルの保障
EU諸国・・・移民に対して、CEFRのB1(日本語能力試験N3~N2相当)を獲得する権利が保障されている
日本・・・「生活者としての外国人」に対し、N4以下で十分という態度である
やさしい日本語の背後にあるもの
やさしい日本語は本当にやさしいのか?やさしい日本語とは、「低賃金の労働者を受け入れてそのベネフィットは享受したいが、移民の受入に伴い生じる責任は放棄する」という日本政府の態度の表れではないか?