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解説

日本語・生活学習プログラムとは 永住・帰化で受講要件化の構想、認定機関と登録日本語教員の活用を検討

公開 2026年9月13日 更新 2026年10月23日 分類 政策・世論/教員資格

政府が検討中の「日本語・生活学習プログラム(仮称)」は、国が提供する日本語と生活ルールの学習制度です。永住許可で受講とB1相当以上の証明を要件化する検討があり、対面講座は認定機関・登録日本語教員の活用を想定。試行開始は令和10年度中の予定です。10月20日の第3回までに自治体・経済団体の意見が出そろいましたが、費用負担と講師要件は未決定です。

どこが主体の話なのか

「日本語・生活学習プログラム(仮称)」は、中長期の在留を目的とする外国人に、日本語と生活上の制度・ルールの学習を国の責任で提供する構想です。検討の司令塔は内閣官房の外国人との秩序ある共生社会推進室で、有識者会議の下に検討のためのワーキンググループが置かれ(令和8年7月24日設置決定、庶務は内閣官房と法務省)、2026年8月18日に第1回が開かれました。制度設計の叩き台を出したのは法務省(法務大臣政務官PT・令和8年7月)で、受講を在留審査と結びつける部分は入管庁の領分です。教育の中身と供給体制は文科省の日本語教育施策と重なり、令和9年度概算要求には事項要求として入っています。つまり「入管庁が主体」というより、内閣官房が束ね、法務省・入管庁が審査との接続を、文科省系が教育の供給を担う分担です。

何をやるのか AとBの2本立て

ワーキンググループ第1回の論点資料は、「入国前・入国直後の学習(Aコース(仮称))と、永住許可や帰化に向けた学習(Bコース(仮称))で、段階的に内容を高度化していく」2本立てを示しています。Aコースはeラーニング中心、Bコースは「認定日本語教育機関等を活用した対面講座(同時双方向型オンライン)」が中心です。学ぶ中身は日本語だけでなく、生活上の制度やルールの知識を含みます。到達レベルは、Bコースで中期・長期の2段階の達成レベルを設定することが論点とされ、永住許可申請の審査では「B1相当レベル以上の日本語能力の証明を求め」る方向が示されています。

A 入国前・入国直後 eラーニング中心(ICT教材) 日本語+生活の制度・ルール 入国前から海外でも学習 B 永住・帰化に向けた学習 対面講座(同時双方向型オンライン)中心 認定日本語教育機関等の活用を検討 永住審査でB1相当以上の証明を検討 在留審査との接続(検討中) A:初回の在留期間更新許可申請の審査時に受講状況を確認 B:永住許可申請・長期在留の申請・帰化の審査時に確認。受講を許可要件とすることも検討
検討中の構成(ワーキンググループ第1回資料〈2026年8月18日〉による。いずれも検討段階)

受けさせるのは誰か 受入れ機関の立ち位置

実施の軸は国です。法務省の資料は「国の責任において、体系的なプログラムを提供し、地方公共団体の負担軽減と受入れ機関による学習支援の充実」を掲げています。つまり企業や学校などの受入れ機関は「受講させる義務を負う側」ではなく、学習支援の担い手として位置付けられています。受講への強制力は、受入れ機関経由ではなく本人の在留審査経由でかける設計です。論点資料は「永住許可申請だけでなく、一定の長期滞在を目的とする在留申請の際にも、学習プログラムの受講を許可要件とする方向で検討するべきである」とし、確認のタイミングとして、Aコースは初回の在留期間更新許可申請の審査時、Bコースは永住許可申請や10年以上など長期の滞在となる在留申請の審査時、さらに帰化許可申請の審査を挙げています。永住・帰化の審査では受講だけでなく理解度の確認も論点です。いずれも現時点では「論点」であって確定した制度ではありません。

講師は誰がやるのか

法務省の資料は、検討課題として「認定日本語教育機関・登録日本語教員の活用のための具体的な仕組み」を挙げ、ワーキンググループの論点資料も「Bコース(仮称)では、認定日本語教育機関等の活用を検討する」としています。講師の資格要件はまだ決まっていませんが、認定機関と登録日本語教員が検討文書に名指しで登場していることは確かです。このほか、中期以降の地方公共団体等による対面講習(地域特性を加えた内容)も掲げられており、地域日本語教育の担い手にも接続します。

いつから始まるのか

ワーキンググループ第1回資料のスケジュールでは、令和9年3月中に「外国人の受入れの基本的な在り方に関する基本方針」を策定し、令和10年度(2028年度)中にプログラムの試行を開始する予定です。2026年7月の第二次出入国在留管理基本計画には「試行的な導入の検討」が盛り込まれ、8月18日にワーキンググループが始まり、令和9年度概算要求に準備の事項要求が入った、というのが現在地です。正式な開始時期・対象範囲は未確定で、受講費を国・企業・本人のだれが負担するかも今後の論点です(第2回・第3回で出た意見は次の節)。

第2回・第3回の議論 決まったことはまだない

第1回のあと、ワーキンググループは9月18日の第2回(自治体ヒアリング)、10月20日の第3回(関係団体ヒアリング)を開いています。第2回は愛知県・山梨県・神戸市・今治市の資料と議事要旨が、第3回は経団連・日本商工会議所・CINGA・桃山学院大学准教授の資料が公表されています(第3回の議事要旨は10月23日時点で未公表)。以下はいずれも出席者・団体の意見で、国が決めた内容ではありません。議事要旨では多くの発言が発言者を特定せずに記されているため、発言者が分からないものは発言者を書かずに紹介します。

費用負担と企業の役割。第1回の議事要旨には、補佐官の挨拶として「財源は、在留資格の更新手数料等を活用する。」とあります(財源の話です。受講者本人が払うかどうかは別の問いです)。同じ挨拶には、雇用主の力も得て進めるよう議論してほしいという趣旨もあり、受入れ機関を「学習支援の担い手」とする整理がどこまで維持されるかはまだ見えません。第3回で経団連は、費用の全体像が明らかでない中で財源の具体的な議論は困難とした上で、受益者である本人が一定の費用を負担することが基本、企業には一律の法的義務ではなくまずは努力義務とするのが適当と述べ、企業が費用を肩代わりする場合に本人の給与所得として課税される懸念から非課税措置の検討も求めています。日本商工会議所は企業に新たな負担が生じても対応が難しいとして国の支援を、CINGAは「誰が負担するのか明確に」を求めています。第2回の議事要旨では、財源が限られた自治体への国の支援を求める発言があります。

講師と提供体制。第2回の議事要旨には、登録日本語教員や認定日本語教育機関であればよいという考え方は危ういという指摘と、登録日本語教員が指導するコースであることを強調しつつそれだけで十分とはしないという自治体の発言が並んでいます。教育者の不足がBコースのボトルネックだという指摘もあります。第3回では、日本商工会議所が有資格者への適切な対価の設定とその国の支援を、CINGAが地方の認定日本語教育機関の不足と日本語教師の賃金・待遇改善を挙げました。

Bコースの形。第1回の論点資料はBコースを認定機関等を活用した対面講座(同時双方向型オンライン)中心としていますが、第2回の議事要旨では、散在地域ではオンラインだけで受講できるようにしてほしい、基本的にはオンデマンドで学習する、といった発言も記されています。一方で第1回の議事要旨には、対面授業を基本とする意見や、A2・B1レベルを目標にするなら「eラーニングだけでの習得は困難ではないか」という問いかけもあり、形態は意見が割れています。第2回では、2次医療圏程度(約300)のクラスターを単位にして県が形成を促す案も、委員から出ています。

在留審査との接続。第1回の論点資料は受講を許可要件とする方向での検討を示していますが、第3回の経団連は未受講を直ちに更新不許可等に結び付けず、優遇措置などのインセンティブで促すべきだとし、永住許可時に受講・理解を求めることは「考えられる」としています。桃山学院大学の准教授は、受講を求めることと誰もが公平に学べることの両立、所得や生活状況に応じた減免、理解度を審査に反映する場合は目的と方法を慎重に検討することを求め、CINGAは受講が「動機付け」になるには在留審査の透明化が必須としています。審査への結びつけ方について、第1回の論点資料とこれらの意見との間に温度差がある、というのが当方の読みです。

日本語教師の活躍の場はどこになりそうか

公表されている範囲では3つです。第一に、Bコースの対面講座。認定日本語教育機関等の活用が検討されており、教えるのは登録日本語教員になる見込みです。第二に、地方公共団体等の対面講習。地域日本語教育の現場と重なります。第三に、AコースのICT教材の開発側です。

現状との接続で一点。認定日本語教育機関の申請は現在、留学課程226に対して就労課程4・生活課程2(文科省・令和8年度1回目)で、留学以外の課程はほぼ空白です。このプログラムが動けば、生活課程など非留学の認定を取る動きが出てくる可能性があります(ここは当方の見方です)。第2回・第3回でも、登録日本語教員の待遇と地方の認定機関の不足が同じ形で指摘されており、教える人と場が足りないことが制度設計の前提問題になっています。

実務への影響

  • いま対応が必要なことはない。制度は検討段階で、ワーキンググループ資料のスケジュールでは試行開始は令和10年度(2028年度)中の予定。
  • 認定日本語教育機関(とこれから認定を取る学校)には、留学以外の新しい事業領域になりうる。検討の行方を見ておく価値がある。
  • 費用負担をめぐって、企業の努力義務や本人負担をうたう意見が出始めた(経団連の意見であり、決定ではない)。受入れ企業や人材紹介は、第3回の議事要旨と次回以降の資料で負担の形がどう書かれるかを見ておく。
  • 見ておく場所は、ワーキンググループの配布資料と、年末の予算編成(事項要求の行方)。

この制度は検討段階で、名称も仮称です。本記事の骨子(A・Bコースの構成、永住審査でのB1相当以上の証明、審査との接続、令和10年度中の試行開始予定)は、法務大臣政務官PT資料(令和8年7月)とワーキンググループ第1回配布資料(2026年8月18日)で確認しています。第2回・第3回の節は2026年10月23日の追記で、第1回・第2回は議事要旨、第3回は団体の提出資料にもとづきます(第3回の議事要旨は未公表)。いずれも「論点」「予定」「意見」の段階で、今後の検討で変わりうるものです。新しい公表が出たらこの記事も更新します。

一次資料

  1. 内閣官房「日本語・生活学習プログラム(仮称)の検討のためのワーキンググループ」(第1回・2026年8月18日)
    www.cas.go.jp/jp/seisakukaigi/gaikokujinzai/programwg/index.html
  2. WG第1回 資料1「ワーキンググループの開催について」(今後のスケジュール含む・PDF)
    www.cas.go.jp/jp/seisakukaigi/gaikokujinzai/programwg/dai1/shiryo1.pdf
  3. WG第1回 資料6「日本語・生活学習プログラム(仮称)に係る主な論点」(PDF)
    www.cas.go.jp/jp/seisakukaigi/gaikokujinzai/programwg/dai1/shiryo6.pdf
  4. WG第1回 議事要旨(PDF)
    www.cas.go.jp/jp/seisakukaigi/gaikokujinzai/programwg/dai1/gijiyoshi01.pdf
  5. WG第2回(2026年9月18日)議事次第・資料(愛知県・山梨県・神戸市・今治市)
    www.cas.go.jp/jp/seisakukaigi/gaikokujinzai/programwg/dai2/gijishidai.html
  6. WG第2回 議事要旨(PDF)
    www.cas.go.jp/jp/seisakukaigi/gaikokujinzai/programwg/dai2/gijiyoshi01.pdf
  7. WG第3回(2026年10月20日)議事次第・資料
    www.cas.go.jp/jp/seisakukaigi/gaikokujinzai/programwg/dai3/gijishidai.html
  8. WG第3回 資料1 経団連「日本語・生活学習プログラム(仮称)の検討に向けた意見」(PDF)
    www.cas.go.jp/jp/seisakukaigi/gaikokujinzai/programwg/dai3/shiryo1.pdf
  9. WG第3回 資料2 日本商工会議所説明資料(PDF)
    www.cas.go.jp/jp/seisakukaigi/gaikokujinzai/programwg/dai3/shiryo2.pdf
  10. WG第3回 資料3 CINGA資料(PDF)
    www.cas.go.jp/jp/seisakukaigi/gaikokujinzai/programwg/dai3/shiryo3.pdf
  11. WG第3回 資料4 桃山学院大学准教授資料(PDF)
    www.cas.go.jp/jp/seisakukaigi/gaikokujinzai/programwg/dai3/shiryo4.pdf
  12. 法務大臣政務官PT「『日本語・生活学習プログラム(仮)』の創設に向けた検討のポイント」(令和8年7月・PDF)
    www.moj.go.jp/isa/content/001465853.pdf
  13. 法務省「外国人が日本語や我が国の制度・ルール等を学習するプログラムの検討に関する『法務大臣政務官PT報告書』(令和8年7月)」
    www.moj.go.jp/isa/policies/others/04_00118.html
  14. 出入国在留管理庁「第二次出入国在留管理基本計画」(2026年7月)
    www.moj.go.jp/isa/policies/policies/basic_plan.html
  15. 解説「令和9年度概算要求 日本語教育支援パッケージは31億円から113億円+事項要求に」(当サイト・2026年9月4日)
    tredecim.co.jp/gyokai-news/kaisetsu/20260904-r9-gaisan-yokyu.html

この解説は2026年10月23日時点の公表資料にもとづいています。制度は変わることがあるため、判断の際は必ず上記の一次資料をご確認ください。内容の正確性や当社の見解を保証するものではありません。

訂正履歴 2026年10月23日 追記:ワーキンググループ第2回(9/18)と第3回(10/20)で出た意見を「第2回・第3回の議論」として追加しました。9月12日公開時の記述を訂正したものではありません。第3回の議事要旨は10月23日時点で未公表です。