日本語・生活学習プログラムとは 永住・帰化で受講要件化の構想、認定機関と登録日本語教員の活用を検討
政府が創設を検討している「日本語・生活学習プログラム(仮称)」は、国が提供する日本語と生活ルールの学習制度です。入国前後のeラーニング(Aコース)と、永住・帰化に向けた対面講座(Bコース)の二本立てで、永住許可申請では受講を許可要件とし、B1相当以上の日本語能力の証明を求めることが検討されています。対面講座は認定日本語教育機関・登録日本語教員の活用を検討、ワーキンググループ資料のスケジュールでは試行開始は令和10年度(2028年度)中の予定です。日本語教師の新しい職域になりうる検討です。
どこが主体の話なのか
「日本語・生活学習プログラム(仮称)」は、中長期の在留を目的とする外国人に、日本語と生活上の制度・ルールの学習を国の責任で提供する構想です。検討の司令塔は内閣官房の外国人との秩序ある共生社会推進室で、有識者会議の下に検討のためのワーキンググループが置かれ(令和8年7月24日設置決定、庶務は内閣官房と法務省)、2026年8月18日に第1回が開かれました。制度設計の叩き台を出したのは法務省(法務大臣政務官PT・令和8年7月)で、受講を在留審査と結びつける部分は入管庁の領分です。教育の中身と供給体制は文科省の日本語教育施策と重なり、令和9年度概算要求には事項要求として入っています。つまり「入管庁が主体」というより、内閣官房が束ね、法務省・入管庁が審査との接続を、文科省系が教育の供給を担う分担です。
何をやるのか AとBの2本立て
ワーキンググループ第1回の論点資料は、「入国前・入国直後の学習(Aコース(仮称))と、永住許可や帰化に向けた学習(Bコース(仮称))で、段階的に内容を高度化していく」2本立てを示しています。Aコースはeラーニング中心、Bコースは「認定日本語教育機関等を活用した対面講座(同時双方向型オンライン)」が中心です。学ぶ中身は日本語だけでなく、生活上の制度やルールの知識を含みます。到達レベルは、Bコースで中期・長期の2段階の達成レベルを設定することが論点とされ、永住許可申請の審査では「B1相当レベル以上の日本語能力の証明を求め」る方向が示されています。
受けさせるのは誰か 受入れ機関の立ち位置
実施の軸は国です。法務省の資料は「国の責任において、体系的なプログラムを提供し、地方公共団体の負担軽減と受入れ機関による学習支援の充実」を掲げています。つまり企業や学校などの受入れ機関は「受講させる義務を負う側」ではなく、学習支援の担い手として位置付けられています。受講への強制力は、受入れ機関経由ではなく本人の在留審査経由でかける設計です。論点資料は「永住許可申請だけでなく、一定の長期滞在を目的とする在留申請の際にも、学習プログラムの受講を許可要件とする方向で検討するべきである」とし、確認のタイミングとして、Aコースは初回の在留期間更新許可申請の審査時、Bコースは永住許可申請や10年以上など長期の滞在となる在留申請の審査時、さらに帰化許可申請の審査を挙げています。永住・帰化の審査では受講だけでなく理解度の確認も論点です。いずれも現時点では「論点」であって確定した制度ではありません。
講師は誰がやるのか
法務省の資料は、検討課題として「認定日本語教育機関・登録日本語教員の活用のための具体的な仕組み」を挙げ、ワーキンググループの論点資料も「Bコース(仮称)では、認定日本語教育機関等の活用を検討する」としています。講師の資格要件はまだ決まっていませんが、認定機関と登録日本語教員が検討文書に名指しで登場していることは確かです。このほか、中期以降の地方公共団体等による対面講習(地域特性を加えた内容)も掲げられており、地域日本語教育の担い手にも接続します。
いつから始まるのか
ワーキンググループ第1回資料のスケジュールでは、令和9年3月中に「外国人の受入れの基本的な在り方に関する基本方針」を策定し、令和10年度(2028年度)中にプログラムの試行を開始する予定です。2026年7月の第二次出入国在留管理基本計画には「試行的な導入の検討」が盛り込まれ、8月18日にワーキンググループが始まり、令和9年度概算要求に準備の事項要求が入った、というのが現在地です。正式な開始時期・対象範囲は未確定で、受講費を国・企業・本人のだれが負担するかも今後の論点です。
日本語教師の活躍の場はどこになりそうか
公表されている範囲では3つです。第一に、Bコースの対面講座。認定日本語教育機関等の活用が検討されており、教えるのは登録日本語教員になる見込みです。第二に、地方公共団体等の対面講習。地域日本語教育の現場と重なります。第三に、AコースのICT教材の開発側です。
現状との接続で一点。認定日本語教育機関の申請は現在、留学課程226に対して就労課程4・生活課程2(文科省・令和8年度1回目)で、留学以外の課程はほぼ空白です。このプログラムが動けば、生活課程など非留学の認定を取る動きが出てくる可能性があります(ここは当方の見方です)。
実務への影響
- いま対応が必要なことはない。制度は検討段階で、ワーキンググループ資料のスケジュールでは試行開始は令和10年度(2028年度)中の予定。
- 認定日本語教育機関(とこれから認定を取る学校)には、留学以外の新しい事業領域になりうる。検討の行方を見ておく価値がある。
- 見ておく場所は、ワーキンググループの配布資料と、年末の予算編成(事項要求の行方)。
この制度は検討段階で、名称も仮称です。本記事の骨子(A・Bコースの構成、永住審査でのB1相当以上の証明、審査との接続、令和10年度中の試行開始予定)は、法務大臣政務官PT資料(令和8年7月)とワーキンググループ第1回配布資料(2026年8月18日)で確認しています。いずれも「論点」「予定」の段階で、今後の検討で変わりえます。新しい公表が出たらこの記事も更新します。
一次資料
- 内閣官房「日本語・生活学習プログラム(仮称)の検討のためのワーキンググループ」(第1回・2026年8月18日)
www.cas.go.jp/jp/seisakukaigi/gaikokujinzai/programwg/index.html - WG第1回 資料1「ワーキンググループの開催について」(今後のスケジュール含む・PDF)
www.cas.go.jp/jp/seisakukaigi/gaikokujinzai/programwg/dai1/shiryo1.pdf - WG第1回 資料6「日本語・生活学習プログラム(仮称)に係る主な論点」(PDF)
www.cas.go.jp/jp/seisakukaigi/gaikokujinzai/programwg/dai1/shiryo6.pdf - 法務大臣政務官PT「『日本語・生活学習プログラム(仮)』の創設に向けた検討のポイント」(令和8年7月・PDF)
www.moj.go.jp/isa/content/001465853.pdf - 法務省「外国人が日本語や我が国の制度・ルール等を学習するプログラムの検討に関する『法務大臣政務官PT報告書』(令和8年7月)」
www.moj.go.jp/isa/policies/others/04_00118.html - 出入国在留管理庁「第二次出入国在留管理基本計画」(2026年7月)
www.moj.go.jp/isa/policies/policies/basic_plan.html - 解説「令和9年度概算要求 日本語教育支援パッケージは31億円から113億円+事項要求に」(当サイト・2026年9月4日)
tredecim.co.jp/gyokai-news/kaisetsu/20260904-r9-gaisan-yokyu.html
この解説は2026年9月12日時点の公表資料にもとづいています。制度は変わることがあるため、判断の際は必ず上記の一次資料をご確認ください。内容の正確性や当社の見解を保証するものではありません。
訂正履歴 現時点で訂正はありません。