年末年始、あまりに暇すぎて、(日本国内にある留学生を受け入れる)日本語学校の存在意義、なぜ日本語学校は留学生を受け入れるのかということを考えていました。

停滞する日本経済

1989年の世界の企業時価総額ランキングと2020年12月末時点のランキングを見てください。(ちなみに企業の時価総額とは上場企業の株価に発行済の株の総数をかけたものです。)

世界企業時価総額ランキング(1989年

  1. NTT🇯🇵
  2. 日本興業銀行(現みずほ)🇯🇵
  3. 住友銀行(現三井住友)🇯🇵
  4. 富士銀行(現みずほ)🇯🇵
  5. 第一勧業銀行(現みずほ)🇯🇵

バブル景気真っ只中の1989年には時価総額世界トップ10の企業のうち、なんと実に7社が日本企業でした。

世界企業時価総額ランキング(2020年)

  1. アップル🇺🇸
  2. サウジアラムコ🇸🇦
  3. マイクロソフト🇺🇸
  4. アマゾンドットコム🇺🇸
  5. アルファベット(Google)🇺🇸

2020年末の時価総額世界トップ10の企業のうち7社がアメリカ企業で、日本最高位は39位のトヨタ自動車でした。

出典:ダイヤモンド・オンライン

なぜアメリカの企業は現在こんなに調子がよく、日本の企業はトップから転げ落ちてしまったのでしょうか?これは何も日本の企業がマイナス成長しているからでは有りません。実際、トヨタは1989年の時価総額541.7億ドルから2020年には1939.8億ドルまで成長しています。

日本の企業の価値が下がったのではなく、日本の企業より大きな価値を生み出す企業が次々と現れたということです。そしてそのような企業が日本から現れなかったとも言えます。

ではなぜアメリカにそのような企業が現れ、なぜ日本にその様な企業が現れなかったのでしょうか?

アメリカ企業を牽引する企業風土

先程の世界の企業の価値ランキング、ベスト5のうち4社がアメリカ企業で、6位もアメリカ企業(Facebook)です。

実はその5社全てが共通して企業風土として掲げているものがあります。

それがDiversity&Inclusionです。

Apple

Google

Facebook

日本マイクロソフト

これまでの経験や経歴、得意な分野、発想、仕事に対する考え方、価値観、ライフステージなどは十人十色。誰一人として同じではないからこそ、その力を結集したときの可能性は未知数であり無限大です。

マイクロソフトのダイバーシティ

移民国家であるアメリカは世界中から留学生やビジネスパーソンなど、優秀な人材を集めることによって、大学や企業の研究を活性化させ、新しい産業を生み出してきました。多様性によるダイナミズムがアメリカの経済成長の原動力になっています。

日本の企業でも大企業を中心に近年ダイバーシティという言葉が叫ばれるようになってきたものの、ダイバーシティのひとつ、ジェンダーという観点で見ると、世界経済フォーラム(WEF)の発行する「世界ジェンダー・ギャップ報告書(Global Gender Gap Report)2020」におけるジェンダーギャップ指数で世界121位とその取組はまだまだのように思えます。

ダイバーシティ/インクルージョンとは

Diversity(ダイバーシティ)とは日本語で「多様性」という意味です。

ビジネスでは、

  • 人種や国籍、性別、ジェンダー、性格、宗教、価値観、学歴、ライフステージなど様々なバックグラウンドを持つ人材を登用し
  • その多様な人材が力を発揮してもらうこと
  • また正当な評価を受けることができる体制を整えることと
  • それにより新たな価値を創造・提供する、成長戦略のこと

を一般に指していると思います。

Inclusion(インクルージョン)とは日本語で「包括」という意味です。

ビジネスでは組織内にいるすべての従業員が「その組織に受け入れられ、経験や能力、考え方が認められ、また活かされていると実感できる状態」を指していると思います。

まとめると、人ひとりの多様性を受け入れることに加え、またひとりひとりにその組織の構成員であることを実感してもらうことで成長や変化を推進する取り組みが「ダイバーシティ&インクルージョン」ということなのではないかと思います。

日本が留学生を受け入れることの意義

本題に戻って、日本語学校の存在意義、日本が留学生を受け入れる意味とはなんでしょうか?

大学や専門学校の少子化対策?アルバイト労働力のための不足を補う?

私は、留学生が日本に欠けているダイバーシティとインクルージョンをもたらしてくれることに大きな意味があるのではと感じるようになりました。

留学生が日本で学び、働くことによって、アメリカでダイバーシティとインクルージョン推進によって起きたような大学や企業の研究の活性化が日本でも起きる。留学生が日本の企業にイノベーションをもたらすトリガーになってくれる。日本がアメリカの成功に倣うならば、留学生は日本の経済再興の鍵を握る存在と言えるのかもしれません。

それを実現するためには日本の入口である日本語学校も、ダイバーシティとインクルージョンを意識する必要があります。

日本語教育推進基本法の成立、特定技能ビザ創設、FRESCの開業、子どもの日本語教育への体制強化等、日本でもダイバーシティとインクルージョンの実現に向けた取組が進んでいた中だった2020年の1年間、人の流れが停滞してしまったことが残念でなりません。

しかしながらこの人の流れは一旦頓挫したものの止まること、後退することはないと思います。